事例Ⅰ 創造性・独創性のマネージメントの3つの要因と8つのポイント

近年の中小企業白書では、研究開発が取り上げられることが少なくありません。

中小企業診断士2次試験の事例Ⅰでも、平成30年、平成26年と研究開発に関する事例が取り上げられています。


平成30年の第4問では「チャレンジ精神と独創性の維持」が出題されています。

平成30年度 第4問
A社が、社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。中小企業診断士として、100字以内で助言せよ。

採用、配置、能力開発、評価制度、モラール向上、権限委譲などを切り口に一次知識で対応できそうです。

しかし、これで「独創性のマネージメント」ってできるんでしょうか?
一般的な組織・人事の切り口で対応していいものでしょうか?
悩みませんか? 私は悩みました。

そこで、一歩踏み込んでみます。

ハーバード大学などで社会心理学の視点から創造性の研究に携わってきたテレサ・アマビール博士の理論を紹介します。


アマビール博士の理論が一次試験で直接問われることはありませんが、
1次知識と結び付けることで、2次試験において思考の糧となる理論です。

創造性の定義


独創性の話をしているのに、創造性って、、と思われると思います。

アマビール博士による創造性の定義は、

独創的で巧みな発想だけでなく、品質の向上やプロセスの革新のように実行可能で利便性がある発想も含まれる

としています。

創造性の中に独創性も含まれますので、大丈夫です!

個人に影響する3つの要因

創造性を作り出すには、研究者には以下の3つの要素が必要としています。

  1. 課題達成のためのモチベーション
  2. 専門能力
  3. 創造性関連プロセス (Creativity-relevant processes)

モチベーションが高く、自分の領域の専門知識に長けた技術者が、
自分の専門領域以外にも知識を広げるなどの創造性関連プロセスを発揮して、
創造的な仕事によって課題を達成していくという流れです。


個々の要因を見ていきます。

  • 課題達成のためのモチベーション
    興味や情熱、関心への挑戦などの内因的なモチベーションが大切です。 逆にハーズバークの「衛生要因」のような金銭的報酬や昇進は、マイナス要因としています。
  • 専門能力
    自身の専門領域のおける高い技術・知識をさします。
  • 創造性関連プロセス
    創造性に関連するプロセスには、創造的発想を助ける要因を指しています。以下の要素が含まれます。
    • 職務における自律性
    • 人格特性
    • リスクを恐れない
    • 新しい視点の取得・コラボレーション
    • 規律ある作業スタイル
    • アイデア生成スキル

3つの視点は試験でも大きな手掛かりになりそうです。

7科目と広範囲の1次試験を勉強していると、「この理論は自分の仕事につかえそう」と思って、応用してみることありませんか?
それは創造性です。診断士自身が創造性高い仕事だと思いますね。

だた弱点があります。最後の「創造性関連プロセス」です。
なんだか、ふわっとして、ここに詰め込んだ感が否めないような気がしています。

アマビール博士もそう思ったかどうかは知らないのですが、続いて、
「KEYS to Creativity and Innovation」というツールを開発しました。

KEYSは78項目の質問のアンケートを取り、組織の創造的な風土を評価するための指標を導き出しています。
創造的風土を促進するのは3つのカテゴリーと8つの要因であることを示しました。

組織に影響するの8つのポイント

マネージメントに関すること

1.自由(影響度:とても小さい)
自分の仕事をコントロールできていると感じること。自由裁量、権限が委譲されていること。

2.挑戦的な仕事 (影響度:普通)
やりがいのある仕事や重要なプロジェクトに懸命に取り組む必要があることを認識していること。

3.上司による励まし(影響度:大きい)
上司が自身が優れたモデルとして働き、目標を適切に設定し、チームをサポートし、個々の貢献を評価し、チームに成功を示していること。

4.グループのサポート(影響度:大きい)
コミュニケーションが活発で、新しいアイデアを受け入れ、建設的に互いに挑戦し、信頼し合い、助け合い、自分の仕事にコミットしていると感じる多様なスキルを持つワークグループ。

組織に関すこと

5.組織的奨励(影響度:大きい)
アイデアに対して、公正かつ建設的な判断を通じて創造性を促進する組織文化があること。
創造的な仕事に対する報酬と表彰制度、新しいアイデアを開発するためのメカニズム、積極的なアイデア出しとビジョンの共有など。

6.組織の障害 (影響度:普通)
これは、マイナスの要因です。
内部政治の問題、新しいアイデアへの厳しい批判、破壊的な内部競争、リスクの回避、現状維持の過度な姿勢。

リソースに関すること

7.十分なリソース(影響度:低い)
資金、材料、施設、情報などの適切なリソースへのアクセスできること。

8.現実的ではない仕事のプレッシャー(影響度:とても低い)
これは、マイナス面の要因です。
短時間で多すぎる仕事を行うことなど。

中小企業診断士試験の2次試験や1次知識と合わせて考えても納得する内容ではないでしょうか。

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参考文献
https://www.ccl.org/wp-content/uploads/2016/08/keys-sample-report-center-for-creative-leadership.pdf
https://www.hbs.edu/faculty/Publication%20Files/12-096.pdf