診断士とサイコロ転が師

中小企業診断士というのは経営コンサルタントの国家資格であり、企業様の問題解決を生業とする人々をさします。

もう少し具体的にいうのであれば、企業様の高度な意思決定のお手伝いをする人々だと思っています。

ここで、企業様の問題解決、言い換えると高度な意思決定のお手伝いは、

“サイコロ転が師”

にはできないのでしょうか?

 ※サイコロ転が師:当HP(HBD-project)の造語で、「サイコロを転がすことで意思決定を行う人」をさします。

例えば、ある企業の社長様が

「Aという商品を開発すべきか、Bという商品を開発すべきかで悩んでいるんだよね」

と相談してきたとしましょう。

中小企業診断士は、以下のように助言しました。

「今のマーケットトレンドを考慮するとAという商品は時代の流れとあっており、また御社の強みをいかした商品で他社と差別化できるため絶対にAを開発すべきです」

一方で、サイコロ転が師は以下のように助言しました。

「サイコロを転がしたらBを開発すべき、となりました。御社はBを開発すべきです」

さて、一体どちらが正しいのでしょうか?

~1年後~

社長のお言葉:

「いや~!サイコロ転が師さんの助言通りに、Bを開発して正解でした!!
有名人の○―ラが生放送で愛好家宣言してくれたのが効きましたね!!

この話は、誇張でもなんでもありません。

結局、意思決定を行う上で想定できない要因というのは存在します。

である以上、サイコロを転がしたってロジックで考えたって、結果は誰にも分らないんです。

ただし、意思決定が1回限りの場合は、

ですが。

新たに、同じ社長から相談を受けたとしましょう。

「前回はBを開発して正解だったけど、次にXという商品を開発すべきか、Yという商品を開発すべきかで悩んでいるんだよね」

中小企業診断士は、以下のように助言しました。

「マーケットトレンド的にはXが良いように一見思えます。しかしながら、当業界におけるキーマンの○―ラにヒアリングを実施したところ、圧倒的にY商品を好むことが分かりました。御社はY商品を開発すべきです。」

一方で、サイコロ転が師は以下のように助言しました。
「サイコロを転がしたらXを開発すべき、となりました。御社はXを開発すべきです」

~1年後~

社長のお言葉:

「いや~!中小企業診断士さんの助言通りに、Yを開発して正解でした!!
有名人の○―ラが生放送で愛好家宣言してくれたのが効きましたね!!

だんだん、言いたいことが伝わってきたかと思います。

つまり、意思決定が1回限りであれば、診断士(ロジック)もサイコロ転が師(ランダム)も何も変わらないんです。

ですが、唯一違うのは、
「中小企業診断士(ロジック)は、意思決定回数が増えるほど精度を増していく」
ということです。

意思決定の前に仮説を構築し、結果がでたらそれを基にロジックを修正し、それを次回に生かす(つまりはPDCAサイクルを回す)ことで、長い目で見ると良い成果を残すことができます。

これに対して、サイコロ転が師(ランダム)は、常に勝つか負けるか五分五分の勝負をしています。長い目でみれば、勝率は必ず50%に収束します。

(将来の?)診断士の皆さん、どれだけ論理力があるからと言って、自分の論理を過信してはいけません。
世の中にはどうしても想定できないことはあります。

もし、本当に自分の論理力に自信があるのであれば、

「如何にして試行回数を増やすか」

つまり「如何にして失敗してもまた挑戦できる状況を作るか」

を考えるべきだと思います。

これによって、ランダムな世界から離れ、論理の価値を確立することができます。